韓国料理の本を読むと、よく「純豆腐チゲ」(スンドゥプチゲ)が出てきます。「純豆腐」とは、温めた豆乳ににがりを打って、固まってきて水分と分離してきたところを通常のように型に入れて水を切って固めるのではなく、そのまますくい取って食べるものを言います。日本で言えば、「くみ出し豆腐」とか「おぼろ豆腐」と言われているものと同じです。良くこの豆腐の説明で「にがりを打つ前の豆腐」と書いてあるのがありますが、にがりを打たないと単なる豆乳(呉)であり間違いのようです。この純豆腐をテンジャンチゲに入れたのが純豆腐チゲです。テンジャンチゲマニアの私としては是非食べてみたくて、新大久保あたりの店で頼んでみたことが何回かありますが、出てきたのは単なる豆腐チゲで、絹ごしや木綿の普通の奴でした。
そういうわけで何とか本物を一度食べてみたいと思っていましたが、プサンの北部にある東莱温泉というところで、虚心庁という巨大な健康ランド型の温泉でくつろいだ後、何かうまそうなものはないかと温泉街をぶらぶらしていた私の目に飛び込んできた赤い看板...
そこには、まぎれもなく「***スンドゥプ」のハングルが!!店の雰囲気も、外食歴20年以上のカンから判断してきわめてよさそうです。迷わず入ってみたらそこは確かに「純豆腐専門店」!!早速純豆腐定食を頼みました。定食には下の写真のようなオカラのチゲもついていて、なんとも鄙びた味で、興味深いものがありました。肝心のスンドゥプチゲですが、固まりかけの豆腐がふるふるして、日本で食べたものとはまったくの別物、満足の一品でした。スンドゥプに限らず、韓国の豆腐は概して日本のものよりおいしいような気がします。凝固剤などをつかわず真面目に作っているからでしょうか。豆腐のオリジナルは中国ですが、明の時代から朝鮮での豆腐作りが優れていたことは知られていたようです。