港町プサンの最大の名所は、個人的には何といっても東アジア最大の魚市場であるチャガルチ市場。東京の築地のように、街からちょっと離れた場所にあるのではなく、繁華街からすぐのところにあります。プロ相手の店だけではなく、市場に卸されたばかりの鮮魚を売るアジュンマ達の露店が海岸に並行にずらーっと並び、その熱気にはほとんど圧倒されそうです。わが故郷の下関にも、唐戸市場というのがあり、雰囲気はよく似ていますが、規模と人の数は10倍以上違います。チャガルチというのは「石ころ、砂利」という意味だそうで、何でも取れたばかりの魚を砂利の上に並べて売っていたことからついた名前だそうです。
チャガルチ市場の魚たち、まずは淡水魚からです。左はおなじみのウナギ。韓国語ではペムチャンオで、漢字で書くと「蛇長魚」。単にチャンオというとアナゴのことです。韓国でのウナギの食べ方は、丸のまま2枚に開いてタレをつけ、鉄網の上で心臓ピクピク状態を眺めながら焼き、後はカルビと同じようにサンチュで包んで食べます。
右はライギョ(カムルチー)です。韓国語でもカムルチーといいますが、というより、元々韓国語ですね。模様が蛇みたいで日本ではあまり食べませんが、韓国では結構ポピュラーな魚のようです。ただし、寄生虫がいますので、絶対に生で食べないようにしましょう。(カムルチーだけでなく、韓国では川魚の刺身を食べさせる店がありますが、寄生虫の危険性が高いので避けておいた方が無難です。)
左はゲテモノ3種で、左上がナマコ、左下がユムシ(コウジ)、右がホヤです。ナマコは韓国語ではへサム(海參)、海の人參(ニンジン)という意味です。それだけ体にいいと有り難がられています。ユムシは、現地でもユムシと言っていました。これは、日本ではタイやカレイを釣るときのエサです。一匹100円くらいする高級なエサですが、まさか人間の食用にするとは思わず、びっくりしました。とても食べてみる勇気はありませんでしたが、内臓を取って皮を千切りにするんだそうで、食感はイカとナマコの中間ぐらいだとか。帰ってWebで調べてみたら九州などでも食べるところがあるみたいですね。見た目が何かに似ていますが、男性なら誰でも想像するものは同じ...
ホヤは日本だと、関西ではあまり食べることがありませんが、韓国では割とポピュラーです。海鮮鍋(ヘームルジョンゴル)の中にも入っていることがよくあります。
こちらは、韓国では大事な魚のマダラ。韓国語で大きな口、という意味のテグといいます。今が丁度旬なのか、市場のあちこちでこうした卵でお腹をふくらませたテグを見かけました。テグタンというマダラを使ったメウンタンが代表的な料理です。
こちらの2つは、アンコウとエイです。アンコウは韓国語でアグといい、これを使ったアグチムという炒め物は大変おいしいお勧め料理です。
右はエイ(ガンギエイ)です。韓国語ではホンオ(洪魚)とかカオリとかいいます。穴が空けられていますが、これはここに紐を通して地面を引っ張り回して、固い皮に傷をつけて剥きやすくするためだそうです。もっとも今は皮を剥いた状態で売られていますが。取れたてのものより、少し時間を置いて強烈なアンモニア臭がするのを食べるのが通だそうです。
これは、市場の中の貝屋さんです。カキがご覧のようにむき身の状態で売られていました。他にはケジャンに使うガザミ(ワタリガニ)など。エビ類は思ったほど見かけませんでしたが、これもむき身状態で売られていました。
最後に、日本ではもっとも高級魚であるタイですが、こちらではトミといいますが、それほど高い評価は受けていません。市場の中で、その場で刺身にしてくれる店でも、ヒラメが一番ポピュラーで、タイはほとんどみかけませんでした。あってもご覧のように無造作に売られています。同じ写真の左側に写っているイシモチ(チョギ)の方がはるかに珍重されます。(イシモチは中国でも黄魚{ファンユイ}といって珍重されます。日本ではカマボコの材料ぐらいにしか使われませんが。)イシモチを干したものをクルビといって、韓国でもっとも珍重される海産物です。全羅南道の霊光(ヨンガン)クルビがもっとも高級品です。
その他、東日本での最高級魚マグロですが、冷凍物を切ったのを見かけたぐらいでほとんど扱っていませんでした。(これは西日本と同じ)また、カンパチ・ヒラマサのような青物系も少ししか見かけませんでした。たぶんこれらの魚はお寿司屋さんにしか売れないんでしょう。
右はミズタコです。韓国語でナクチとかムノとかいいます。このままの格好で干物にします。日本でも瀬戸内海沿岸の一部で同じようなタコの干物を作っています。