私が住んでいる徳島には、阿波番茶という珍しいお茶があります。このお茶は徳島の山間部に古来より自生するもので、いわば日本のお茶の原点みたいなものといえます。毎年7月半ば頃に、新芽ではなく十分育った葉っぱを一番茶として摘み取ります。これを釜でゆでます。その後が独特の工程になり、なんとお茶の葉を木桶に詰めて上に石を載せて「漬け物」にします。こうすると、茶葉についていた自然の乳酸菌の働きで、普通の漬け物と同じく乳酸発酵するわけです。10日から半月程度漬けた後、天日で乾燥させて完成です。
お茶の種類としては、香港で一般的なプーアル茶と同じ「後発酵茶」になります。ただし、乳酸発酵させるのは、世界のお茶の中でも珍しいのではないでしょうか。徳島では、スーパーなどで、上掲の写真のように紙袋に入れて売っています。この紙袋を開けると、ほのかに酸っぱい匂いがします。お茶の味としても、この酸味が大きな特長で、さっぱりした風味になっています。
茶葉は、煎茶のように手で揉んでいないので、写真のように葉っぱの原型をそのまま留めています。従って「入れ方」としては、煎茶のように急須に入れてお湯を注ぐだけではいけません。麦茶のように、薬缶にお湯をわかし、沸騰したら写真くらいの量の茶葉を中に入れてください。私は後で片づけが楽なように、茶葉を万能こし器に入れてお湯に浸しています。沸騰したお湯の中に1〜2分くらい放置して、しっかりお茶のエキスを「煎じて」ください。
番茶には、カフェインがほとんど含まれていないため、寝る前に飲んでも大丈夫です。また、薬缶一杯に作っておいて、がぶがぶ飲んでも刺激がなく飽きません。普通の煎茶やウーロン茶では、3杯も飲めばもう十分という感じですが、阿波番茶は何杯でもOKです。
徳島以外では入手が難しいかもしれませんが、上掲の写真のは(株)立石園(電話:088-622-6468)のものです。価格は地元では60gで400円くらいです。ちょっとだけ試してみたい方は、鳴門にある藤崎屋といううなぎ屋さんで出てきますので、そちらをどうぞ。(ここの蒸籠蒸しもお薦め。)